Taro Yoshida BLOG吉田太郎のブログ
07
8月2021
2020年4月改正民法と賃貸借への影響について・中編
CATEGORY | 不動産に関する法律
2020年に改正された民法が賃貸借にどれくらい影響あるのか個人的な視点で書いておりますが、今日は2回目となります。
1. 敷金及び原状回復のルールの明確化(★★~★★★)
2. 建物の修繕に関するルールの創設(★★~★★★★)←今日はココ
3. 保証人の保護に関するルールの義務化(★★★★★)
※1回目はこちら。
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2. 建物の修繕に関するルールの創設
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2-1賃貸人の修繕義務(重要度★★)
【改正前】
■貸主は目的物の修繕義務を負う
■「借主の故意過失による修繕については、貸主の修繕義務はない」旨の条文がないが、通説としてはある
【改正後】
■通説が明文化
【コメント】
既に認識されている通説が明文化されただけなので、さほど影響はありません。
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2-2 賃借人の修繕権(重要度★★★★)
【改正前】
■借主が自ら修繕する権限なし
【改正後】
■貸主が修繕の必要性を知っているにもかかわらず対応しないとき、または緊急の事情があるときは、借主自ら修繕することが可能
【コメント】
借主の修繕権が認められたことで、「借主による不必要・過剰な修繕がなされ、その費用について貸主は費用を支払わなければいけないリスクを負うことになった」と拡大解釈することもできます。
貸主側の対策としては、賃貸借契約書に「借主は、貸主に対して、修繕箇所、修繕の必要性及び修繕見積金額を明示した書面の交付をもって事前に通知したうえで、貸主から当該修繕について承諾を得たとき、本物件の修繕をすることができる。」などの規定を設けることが考えられます。
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2-3 賃借物の一部滅失等による賃料の当然減額(重要度★★★★)
【改正前】
■賃貸不動産が使用収益できなくなった場合、その理由が「滅失(なくなってしまうこと)」であれば、借主の請求によって賃料の減額を請求できる(可能)
【改正後】
■賃料の減額が、対象不動産が「滅失」のほか「その他の事由」により使用および収益をすることが出来なくなった場合までに拡張
■借主による請求が無くても、使用収益できなくなった割合に応じて賃料が当然に減額される(強制)
【コメント】
壊れて使えなくなると割合に応じて強制的に家賃が減額させられます。
注意点として、滅失以外の「その他の事由」が何なのか明らかにされておらず、減額される具体的な金額を決める際に「使用収益をすることが出来なくなった部分の割合」の基準が現時点でありません。
当事者間において紛争が生じる可能性があることから、今後どのように対応するのか十分検討しておく必要がありそうです。
貸主側の対応としては、建物や設備の定期的なメンテナンス(修理・交換など)や、万が一のために保険への加入も検討した方がいいでしょう。
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2-4 賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了(重要度★★★)
【改正前】
■賃貸不動産の一部が借主の過失によらないで滅失した場合のみ、借主は契約解除が可能
【改正後】
■賃貸不動産の一部が「滅失」のほか「その他の事由」により使用収益できなくなった場合、残っている部分のみでは賃借の目的を達することが出来ないときは、借主は契約解除が可能
【コメント】
適用対象が拡大されたことで貸主が損害を受けることも考えられますが、借主の故意過失によって損害を被った場合は、貸主から借主に対する損害賠償請求によって対処することとされます。
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次回は「3. 保証人の保護に関するルールの義務化」です。
連帯保証や保証額に関することでかなり重要な部分となりますので、今後の参考にしていただければと思います!