Taro Yoshida BLOG吉田太郎のブログ
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10月2021
グレーゾーンを紹介して大丈夫?
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9/15・16に開催された全国賃貸住宅新聞社主催の「賃貸住宅フェア2021in東京」。
行こうかどうしようか迷いましたが、結局見送りました。
行く前に事務局に問い合わせたら…
「入場数上限5,000人(いつもなら軽く万単位が来場)に達したら入れません」
とか、
「セミナーも入場者数を大幅制限し、当日に整理券配布します」
などといったお話がありました。
また、事務局から「後日、動画を配信します」と言われたので、だったら動画見ればいいやとの結論に至り、行くのを見送った次第であります。
…で、先日その事務局から動画配信メールが来たので、昨日視聴してみました。
約1時間程度の動画で、内容は「業務のアウトソーシング化を取り入れた成功事例紹介」といったものでした。
AIを取り入れた事務作業の簡略化といった紹介もあり「なるほど」と思うところもありましたが、法律の隙間を突いたキワドイ内容もありました。
私はそれを視聴しながら「グレーゾーン的な内容を公に紹介して大丈夫なのかな?」って思ってしまいました。
それはどういう内容かというと「重要事項説明のアウトソーシング」です。
■宅建士の重要事項説明
宅建業法第35条に以下の内容が記載されております。
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
条文を見ると 宅地建物取引士をして と書いてあります。
簡単に言うと「宅建業者は重要事項説明を宅建士にさせなければならない、お客さんに対して。」といった内容です。
また、今までは対面で重説しなければならなかったのですが、平成29年度からITを用いた重説も国土交通省にて認められるようになりました。
IT重説は弊社でも普通に運用していることですし、私も在宅で重説ができるのでとてもありがたいシステムだと思ってます。
■法の解釈の抜け目を突く
上記で重説のことを記しましたが、条文と国交省の説明を拡大解釈すると…
「宅建士であれば誰でもOKなんだから、自社の宅建士が重説やらなくてもいい」
ってできませんか?
宅建業法第35条には「〇〇に所属する宅建士」とか制限が書いてませんので、宅建士証を持った宅建士であれば誰でもOKです(試験に合格しただけではNG)。
また、今までは対面だった重説がITでできれば在宅でもできるわけです。
説明前に宅建士証を相手方に見せなければなりませんが、従業者証を見せなければいけないわけではありません。
上記のように解釈して、セミナーでは…
「条文や国交省の解釈にダメと書いてないということはNGではないので、重説のアウトソーシングを導入し業務効率が上がりました!」
…と紹介されたのです。
■実務ではどうなの?
実務でのお話をすると、通常は物件を管理している会社(元付会社)の宅建士、またはお客さんを紹介した会社(客付会社)の宅建士が説明します。
取引に携わった会社の宅建士が説明するのですから何も問題ありません。
もしどちらの会社の宅建士でも対応できない場合は、第三者の宅建士が説明することもひょっとしたらあるかもしれませんが、そんなイレギュラーなケースは起きても稀でしょうからそれほど大きな問題でもないと思います。
■アイデアはいいけど大丈夫?
重説は取引をするうえで必ず宅建士がしなければならず、件数が多ければ他の仕事との兼ね合いで段取り調整が必要だったり、ひょっとしたら休みに対応しなければいけなかったり、意外と負荷がかかってきます。
だから重説のアウトソーシングができればかなり業務効率が上がるのは確かだと思います。
セミナーでこれを紹介された方はアウトソーシング化にあたり、法律の解釈を役所等に問い合わせたそうです。
そしたら「専任の宅建士が説明するのが望ましい」とのこと。
その回答を受けて、「ダメだといわれてないので、グレーではあるが大丈夫と判断してアウトソーシングを導入」し、結果的にはトラブルも殆どなく業務効率を改善したそうです。
私はその話を聞いて、正直違和感しかありませんでした。
アウトソーシングがダメだとは全く思いませんし、実際に効果が出ているので成功だと思います。
自社の取り組みとしてやる分にはいいと思います。
ただ、グレーゾーンでの成果を公の場で言うのはちょっと違うんじゃない?って思ってしまいます。
■考え方の一つとして捉える
私自身、ちょっと理屈っぽい部分もあり、否定的なことを書いてしまいましたが、アイデアとしてはいいと思います。
実際に効果も出て、トラブルは殆ど出てないわけですから、成功と言っていいかもしれません。
取り組みをやるかどうかは各社の判断ですから、私も「こういうやり方があるんだな」と参考にさせていただきます。